あなたがPowerMac6100のオーナーで、旧Newer TechnologyのMAXpowr G3 PDS cardや、Sonnet TechnologiesのCrescendo/NuBusなどのG3アップグレード を利用すると、もはやApple AV cardやHPV card (VC card)のみが、内蔵ハードの(CD-ROMやHDD, FDDをのぞく)機能拡張における残された選択肢となってしまいます。
でも、もしG3化以前にNuBus adapter cardを使ってVideoカードやその他NuBus拡張カードを利用していたなら、G3化により高速化は望めるものの、 これらNuBusカードの恩恵を受けることができなくなってしまうという苦渋の選択を強いられることとなってしまいます。
私も、この苦渋を強いられたPM6100オーナーの一人でした。が、ある日、友人から余分にPM6100をもらった頃から、 "G3化したPM6100でなんとかこのNuBus adapter cardを利用できないだろうか?" と考えはじめました。これがことの始まりです。(ついでに某小説にちなんだタイトルをつけて、その経過を説明したいと思います。)
MAXpowr G3 PDSやCrescendo/NuBusは、どちらもアップグレード後にAV cardやHPV cardが利用できるようにPDSスロットをアップグレードカード上に持っています。 ということは、NuBus adapter cardも、金属性のL字型のプレートを取り除けば(NuBusスロットの向きを無視すれば)、これらG3アップグレードカードに取り付ける ことが可能ではないかと考えられます。
こうした場合、考えられる問題点として以下のようなことが挙げられます:
特に、前者の方が致命的となります。もし、NuBus adapter cardが使えなければ、G3化によりすべてのNuBusカードをあきらめなければなりません。 以下に、私の体験レポートを記します。
Warning! 以下に記載される事項は、あくまで私個人の私的な作業記録です。 ここに記載される作業により、ロジックボード、G3アップグレードカード、NuBus adapter card等に致命的な被害を与える可能性があります。 あくまで私的作業記録であり、決してこれらを推奨するわけではありません。 特にNuBusスロットの延長にはハンダ付けの技能が要求されるため、必ずしも同じ結果を得られるとも限りませし、当方は一切関知いたしませんのでご了承ください。
当初一台しかPM6100を持っていなかったため、構想だけで実践はしませんでした。が、友人からPM6100/60を譲り受けたため、ダメもとでやってみることとしました。
以下の異なるG3アップグレードカードを用い、PDSスロットにNuBus adapter cardの基盤のみを取り付け、起動できるかどうかを試しました。テスト環境: PowerMac6100/60, 70M RAM, MacOS 9.04 (日本語版)
旧Newer Technology製 MAXpowr G3 PDS 240-266MHz (MXP6100/266,512k 2nd cache), ドライバ: MAXpowr Extension and MAXpowr Control version 2.0.5
実験結果: 良好 問題なく起動
テスト環境: PowerMac6100/60, 70M RAM, MacOS 9.04 (日本語版)
Sonnet Technologies製 Crescendo/NuBus G3 500MHz (CFG3-500-1M), ドライバ: Sonnet Processor Upgrade version 1.47
実験結果: 正常に動作しない - 起動時に爆弾、フリーズ、アイコンパレード中にSonnet Processor Upgradeの所でバッテンマークが出るなど、とにかくまともに起動せず。
テスト環境: PowerMac6100/60, 70M RAM, MacOS 9.04 (日本語版)
Sonnet Technologies製 Crescendo/NuBus G3 400MHz (CFG3-400-1M), ドライバ: Sonnet Processor Upgrade version 1.47
実験結果: 正常に動作しない - 上に同じ。
以上のように、最新のSonnet製のG3アップグレードカードは残念ながらNuBusアダプターカードとは共存できないことが判明した。しかし、 MAXpowrであれば少しは希望が持てそうであることがわかった。
次のステップでは実際にNuBusカードを装着して実験するわけであるが、ここで先に挙げたもう一つの問題に直面しなければならない。
とにかくMAXpowr G3がNuBus adapter cardと共存できることがわかったため、ちょっとは安心してこの作業に取り組めました。 MAXpowrにNuBus adapter carを取り付けると、NuBusスロットの向きがロジックボードに向き合うようになってしまいます。 そこで、単純な延長ケーブルを作ってこれに対処することとしました。私の手元にあるパーツにたまたま96pinのNuBusと同じ基盤付け用コネクタ(実は昔98LTの拡張用に 作ったとあるブツの予備パーツ)と32芯のフラットケーブルがあったので、これらを用いて延長ケーブルを作成しました。
32pinを三列、それもケーブルの両端でハンダ付け(および導通/短絡の有無のチェック)をしなければなりませんので、飽きやすい私にはちょっと苦痛の単調作業でした(やっぱりハンダ付けはいろいろとバリエーションが無いと...)。 図1がこの延長ケーブルです(左側の基盤が変な形をしているのは98LTの拡張時にカットしてコネクタだけをハンダ付けしてあったものをそのまま使ったためで、今回の目的とは関係ありません)。 バッファもかまさずに、どれだけバスを延長してよいものか心配でしたが、とりあえず、筐体内でなんとかNuBusカードをとり回せる程度+ちょっと長めにケーブルの長さを決めました。また、少しでも取り回しが 楽になるようにスダレケーブルを使っています。 あまり見栄えはよくないですが、ちゃんと動作するようであれば後で作り直そうかと思います。(2002年の話です..が、その後予備のNuBus adapterや部品だけはそろえたのですが、結局このまんまです...)
とにかく、このケーブルを使ってどうNuBusカードを配置するかまでは具体的には考える余裕が無かったので、 念のため少し長めにケーブルを作りました。でも作ったあとでやっぱバスの信号が大丈夫かどうか不安になりました。 でももう作ってしまったからにはしかたがないので、とにかく試してみました。
図2に延長ケーブルをNuBusスロットに接続した様子を示します。ロジックボード上のPPC601のヒートシンクにちょっと近い感じもしますが、 普通にPDSカードやNuBusカードを使ってもこの程度の空間があったようなのでまず大丈夫でしょう。
図2: 延長ケーブル接続時のNuBusスロット近傍の様子
とにかく、延長ケーブルの接続は問題なさそうなので、具体的に動作テストを行いました。システムが正常に動作するかどうかはこの時点では不明なので、 ビデオ出力はオンボードのDRAM videoを用いました。
テスト環境: PowerMac6100/60, 70M RAM, MacOS 9.04 (日本語版)
旧Newer Technology製 MAXpowr G3 PDS 240-266MHz (MXP6100/266,512k 2nd cache), ドライバ: MAXpowr Extension and MAXpowr Control version 2.0.5
Radius PrecisionColor Pro 24X (ドライバなしで利用)
実験結果: 問題なく起動!旧Newer technologyに感謝! 実験時にはセカンドモニタを準備していなかったので、システム・プロフィールでPrecisionColorが認識されているかどうかを確認しました。 図3がそのスクリーンコピーです。図ではさらにNewerのGauge PROの結果も示してあります。
このように、G3アップグレードかつNuBusカードが認識されることが確認できました。ここまでくればもう一安心なので、実際にNuBus側のPrecisionColorビデオカードに モニターを接続して起動させてみました。(即接続してもよかったのですが、NuBusカードやらがむき出しの状態なので、いったん落としてからモニターを接続し、起動しました。)
今度こそが、本当のNuBusビデオカードのテストです。起動時のグレーの画面に続いてハッピーマックが現れたときはまさに感無量で思わず"Thanks Newer tech!"と叫んでしまいました。 図4がPrecisionColorをメインモニタとして起動した際のスクリーンコピーです。
図5にこのときの延長ケーブルおよびNuBusカードの配置を示します。画面上側中央付近の赤いカードがRadius PrecisionColor Pro 24X、画面左の緑のカードがNuBus adapter cardです。
図5: 実験時の内部配置
図4から、NuBusビデオカードがAppleシステム・プロフィールにてスロット$Eに設置されていることがわかります。この$EはPM6100特有なのか、それともこのPDSにアサインされているのかもしれません。 ちなみにPowerMac 8100を調べてみると三つのNuBusスロットは下から順に$B, $C, $Dとなっています。PM8100の場合下から四番目に位置するのがPDSスロットとなっています。 (PDSが$Eなので、それの延長でつながるNuBusスロットも$Eとなるとういうことでしょうかね?) Quadra900などのようにNuBusがいっぱいある機種が手元にあればもうちょっと調査もできたのですが、今となっては... ちなみにNewer Techの'Slot Info'によると、ロジックボード上のDRAM VideoはスロットID0にアサインされています。(このプログラムはスロットを0, 9, A, B, C, D, Eと表示しています:最後のスクリーンコピーにSlot Infoの出力も含めてあります。)
すばらしいですね。これでMAXpowr G3とNuBusビデオカードが同時に使うことができます!こうなれば、あとはどんなNuBusカードが使えるかを試すのみです。 表1に私が試したNuBusカードとその結果を示します。
表 1: NuBusカードの試験結果
種類 | 製造元、製品名 |
結果 | コメント |
Video card | Radius PrecisionColor Pro 24X |
良好 | 特に問題なし |
Video card | Radius Thunder IV GX 1600 |
ある程度動作 | 1600x1200では動作が不安定でした. 1600x1200に設定した場合、最初の数分は問題なく動作するのですが、突然デスクトップが灰色となりメニューバーとマウスカーソルが見えるのみで、その他のアイコンやコントロールストリップなどが消えてしまいます。 試しにDSPボードを外してみましたがこの現象はかわりませんでした。 それ以外の解像度では問題なく動作するようです。 |
Video card | Radius Thunder GT 1152 |
良好 | 特に問題なし |
Video card | RasterOps PaintBoard Prism GT |
良好 | 特に問題なし |
Video card | Sonnet Tech. Sonata Pro 24 a.k.a. Village Tronic Computer Mac Picasso 340 |
良好 | 特に問題なし: 1600x1200や1920x1080でもthousand colorsで動作 |
Ethernet Card | Farallon Fast Ether TX-10/100 NuBus card PN990a-TX |
良好 | システムがやや不安定な感じがします |
Wide SCSI card | ATTO SiliconExpress IV |
動作せず! | 個人的に一番使ってみたかったのですが、ハッピーマックさえ現れませんでした... DRAM videoから灰色の画面が出力されるのみでした.... |
これで、MAXpowr G3とNuBus adapter cardを利用して、いくつかのNuBusカードが使えることが判明しました。 しかし、ここで、これまでには述べなかった問題がいくつかあります:それはNuBus adapter cardが長過ぎるということです。 HPVカードも長くてHDDと接触するというような問題もありましたが、NuBus adapter cardはそのHPVカードよりもさらに長いのです。
実はNuBus adapter cardがちょっと長いため、筐体後部のスロット窓から突き出してしまいます。 ただ、カードをよく見ると、カード後部には特に部品やパターンは無いように見受けられるので、 ひょっとすると切り落としても良いかもしれません。 しかし、唯一のNuBus adapter cardに無理はしたくないため、試してはいません
こちらの方が少し深刻な問題となります。カード前部が確実に3.5inch HDDと接触してしまいます。
そこで、私は3.5inch HDDをあきらめ、2.5inch HDDを使うこととしました。 具体的には2.5inch IDE HDD + 2.5inch IDE to SCSIコンバータ + 2.5inch SCSI to 50pin SCSI コンバータを用いることにより省スペース化を実現し、 NuBus adapter cardの前部との接触を避けることができました。
これ以外にCD-ROM用の空間にHDDを移動することも考えられますが、CD-ROMの重要性を考えるとあまり便利とはいえないでしょう。
図6にNuBus adapter cardおよび2.5inch HDD周辺の様子を示します。この図から問題点が明確にわかると思います。 とりあえずは後部のカードアクセス用ふたをあけたままにして利用することとしました。
図6: NuBus adapter card周辺部の様子
上面カバーからの重量を支えるプラスチック製の支柱を取り除くことにより、小さめのカードを内蔵することが可能ではないかと考えられる。 この場合、CRTなどの重量級ディスプレイを本体上に置くことができなくなるが、昨今の液晶ディスプレイの普及を考えれば、これはさほど問題とはならない。
ビデオカードを利用した場合、当然通常の利用の用にNuBusからのビデオ出力を筐体外に出すためのケーブル等が必要となる。私は DB15ビデオケーブルを本体後部のスロット窓へ出せるような簡単な延長ケーブルを作成して利用している。
重要な点はやはり絶縁となる:当然、もともとNuBusカードが設置されることなど考慮されていない空間に強引にカードをおくため、SIMMモジュールやSCSIケーブル、 筐体内壁のシールド用金属等に接触する可能製があるため、これらを配慮して絶縁材を取り付けておく必要がある。
さらに、内蔵CD-ROMを取り除けば、大型のNuBusカードも利用可能であると考えられる。しかし現在のCD-ROMの重要性を考えると、これは必ずしも得策ではない。 やはり小型のビデオカード等が無難なところではないであろうか。
以上のように、G3化PM6100でもNuBus拡張機能を利用することが可能であることがわかった。 これは私的には非常に満足できる結果であるといえる。次なる問題は"さらにNuBusスロットを増やすことができるか?"である。 これについてはまだ定かではない。これには更なる情報収集と時間が必要である....
ちなみにAppleCare Archive Article 2194によると、NuBusのraw AおよびCにおけるpin 26とpin 27は、 スロットのハード固有のアドレスID0からID3に対応しているらしい。この辺りをうまく使えば、更なる スロットの利用が可能ではないかと推測される。
当初のNuBus adapter cardの実験の後、下記のNewer製カードとPM6100/66について追加実験を行いました。
既にMAXpowr G3が問題なく動作することがわかっていたので、思い切って240-266MHz/512kから300-330MHz/1Mへとアップグレードしてしまいました。 (2002年のことです:今更ながらよくもまぁ無駄使いしたものだと...) そんなに体感速度はあがりませんが、それでもNuBusカード環境で問題なく動作することを確認しました。
手持ちのPowerMac 6100/66(264M RAM)にすべて移し替えてみました。期待どおり問題なく動作しました。 といっても、今更ほかのNuBusカードについて調べる元気はなかったので、普段使うVideoカードである Sonata Pro 24 (1600x1200)とRadius Thunder IV GX 1600 without DSP board (1320x1024)のみについて 調べました。その他のものでも先に動作していたものはたぶん大丈夫かとは思います。G3 330MHzと、より新しいSonnetの カードに比べると速度は劣りますが、それでも大満足です:-)
というわけで、私のPowerMac6100はG3でありながら、こんな大きなスクリーンを使えるのでとってもハッピーです!(2002年の話です)
英語版記事を作成した後、米EbayでNuBus adapter cardのデッドストックをいくつか入手できたので、以下のようなことを 試してみました。が、いずれの場合もNuBus adapter cardを破壊してみまったようで、どれもうまくいきませんでした。(かなり気をつけて作業をしたのですが、やっぱり静電破壊とかやってしまったかも?)
GNDパターンのみで重要な回路な存在しないようなので、試しに切り落としたは良いのですが、その後NuBus adapter cardが動かなくなってしまいました。 GNDパターンを切るときの摩擦が起因で破壊?
延長ケーブルなしで使えないかと思い、NuBus adapter cardから垂直方向に出ている96pinコネクタをLタイプの基盤と平行方向に向くタイプに 変えようとしました。元のIタイプのコネクタの取り外しには成功し、取り外し後は正常に動作していたのですが、Lタイプを取り付けた後、 動作しなくなってしまいました。この手のハンダ付け作業にはなれていたのに、ちょっと残念...
また、以下のようなアイデアもあったのですが、結局実行せずじまい...
レアもののNuBus拡張ボックスを入手して取り付ける -> ごくたまにEbayなどにも出ますが、競争率が高い!今更数万も出す気にはなれないし...
本文でも述べましたが、論理上は$Aから$Dは未使用なので、自作で拡張させる(小型のNuBusカード二枚を内部に配置、あるいは外部ボックス化) -> これだったら比較的単純なハードの拡張ですむので、一番実用可能だと思います
PCI MacからNuBusカードを使うための装置なんてのもありましたが、これはその逆方向の思想です。理論上は可能でしょうが、個人レベルでは力量上・知識上・余暇上そこまで力を入れる余裕も無く...
こちらも理論上は可能でしょうが、やっぱり上と同じ理由で...PDSから直接、新しめのEtherやVideoチップ, USBやFireWireなんかとの入出力ができれば良いのですが....今となっては需要無しですよね。
結局は、私のPM6100はMacOS9以前の環境専用に使っていましたが、その後中古でPowerBook G3 Pismoなんかが手に入ったので、使用頻度が減りつつあります...